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\section{はじめに}
この数年でプログラミング教育の動きが活発化している.アメリカでは,NPO法
人Code.orgが作成したプログラミング教育の推進ビデオに多数の著名人が出演
したことで話題となった\cite{WMSDT}.エストニアの公立学校では,プログラ
ミング教育を小学校一年生から開始すると発表されている\cite{WIRED}.イギ
リスでも2014年9月から導入する義務教育のカリキュラムのために,教師を対象
にしたプログラミング教育訓練を開始すると発表されたばかりである
\cite{TECHCRUNCH}.また,日本政府が2013年に発表した「成長戦略(素案)」
には,「義務教育段階からのプログラミング教育等のIT教育を推進する」との
記述がある\cite{JAPAN}.プログラミング教育の重要性は今度もますます増し
ていくだろう.
こうした状況において,マウスやタッチ操作でプログラムを開発できる「ビジュ
アルプログラミング」ツールに注目が集まっている.ビジュアルプログラミ
ングの定義は時代とともに変化しているが\cite{増井1998},本稿では,グラフィ
カルに表現された要素を使い,ユーザーが視覚的にプログラミングすることを
指す.ビジュアルプログラミングツールのなかで特に人気があるのは,MITメディ
アラボが開発したScratch\cite{SCRATCH}である.日本でも2013年に書籍が出版
され\cite{Abe2013},小学生向けのワークショップが各地で開催されている.
日本の学校でもScratchを使った授業が行われており,良好な結果を残している.
たとえば,小学生を対象に行われた授業では,受講者のほとんどが「楽しかっ
た」(5点満点で平均4.78,SD:0.76)と高く評価している\cite{森秀樹
2011}.プログラミング未経験の文系大学生を対象に行われた授業でも,「す
ごく楽しかった」や「色々な欲が出てきた」などの肯定的な感想が述べられ
ている\cite{森秀樹2010}.
Scratchの作者であるミッチェル・レズニックは,ユーザーに受け入れられるた
めの施策として3つの設計原則を設定している.そのひとつが「more social」
である\cite{Resnick2009}.ユーザーはScratchで作った作品をウェブサイトで
共有できるようになっており,そこで他人の作品に投票したり,コメントをつ
けたり,その作品を元にした新しいリミックス作品を作ったりできる.このよ
うに「ソーシャル」であることが,プログラミング初心者に広く受け入れられ,
モチベーションの向上や維持に一役買っていると言える.事実,一日に1,500件
以上ものプロジェクトが新規にアップロードされており,全体の15%以上がリ
ミックス作品である.
しかし,Scratchで作った作品をウェブで共有するところまでたどりつけず,初
期段階でプログラミングにつまずく生徒もいる.先の事例でも,「初めの学習
では苦戦」する小学生や,「1日目はなかなか理解できなかった」文系大学生
がいた\cite{森秀樹2010,森秀樹2011}.最終的な評価は高いものの,開始時の
理解の難しさがプログラミングを始める大きなハードルになっていると考えら
れる.
そこで本研究では,ビジュアルプログラミングを始めるときの苦痛や不安を取
り除き,初心者が「1日目から理解できる」ような新しい形の「ソーシャル」な
ビジュアルプログラミングツールJointryを開発した.Jointryは,複数人がそ
れぞれの画面を使い,お互いに協力して共通のプログラムを作成する「共同プ
ログラミング」の支援機能に特徴がある.Jointryの有効性を評価するために,
実際に複数人の初心者に4つの課題について共同プログラミングを実施してもら
い,その様子を観察した.そして,その観察の結果をもとに,共同プログラミ
ングの有効性を評価した.